「いま必要なのは“転んでも立ち上がる力”」キングコング西野さんの仕事論

2018年2月、東京・恵比寿でCAMP特別イベントが開催されました。ゲストは「お笑い芸人」に「絵本作家」と、多方面で活躍中のキングコング西野亮廣さんです。「リベンジ成人式」の開催やオンラインサービス「レターポット」の開発など、常に斬新なアイデアで世間を驚かせてくれる西野さんに、はたらく上で意識していることや今後挑戦したいことなどについて語っていただきました。

「60点だと何も残らない。狙うなら0点か100点」

佐藤 裕(以下、裕):西野さんといえば今年2月、成人式に出席できなかった新成人に贈る「リベンジ成人式」を開催されて話題となりました。まずはこのイベントの狙いについて伺いたいと思います。

西野 亮廣(以下、西野):そもそものきっかけはうちのスタッフから「被害に遭った新成人のみなさんに、何かしてあげたい」と連絡をもらったことです。ちょうど昨年末に立ち上げたオンラインサービス「レターポット」の収益を何に使おうかと考えているタイミングだったんですが、もともと「レターポット」の収益は被災地支援など社会に還元したいと考えていました。そこでこの収益を活かして成人式を開催すれば、新成人の方の手助けになるし「レターポット」の宣伝もできるし一石二鳥だなと。

裕:リベンジ成人式以外にも、これまで多種多様なイベントに次々と挑戦されていますが、そこには必ず西野さんならではの明確な意図や目的があるように感じられます。そういった西野さんが「挑戦してみたい」と思われるものの共通点、いわゆる原動力は何ですか?

西野:やっぱり知らないものに対する興味は大きいですね。あとは不安定な要素があるものに賭けます。そういうものにはとんでもない問題や想定外の発見が潜んでいるので、それらを解いたり、見つけたりするのが楽しいですね。あとはせっかく時間をかけるなら60点ではなく、0点か100点を出したいんです。0点ならネタになりますが60点では何も残りませんから。失敗したらそこからやり直せばいいだけのことです。僕はそんなに上手く歩けないし転ぶこともありますが、立ち上がれる自信はあります。転ばないように歩くとよりも転んだ時に立ち上がれる能力を培った方が、これからの時代は生きやすいと思います。

「どんな批判も想定内。そもそも批判のない企画なんて面白くない」

裕:新しいことを始める時にはさまざまな批判があると思います。どのように受け止めていますか?

西野:年に数回の炎上だと滅入っちゃうかもしれないですけど、僕の場合は基本、燃えていて暖炉みたいな状態なので気になりませんね(笑)。それに基本的に批判のないものは面白くないと思うんですよ。

裕:確かに、新しいことを始める時に反対意見はつきものですから、そういった批判も前向きにとらえながら、意志をもって突き進むことが大事なんですね。「周りがこういう反応をするだろうな」というシミュレーションは、あらかじめされていますか?

西野:オンラインサロンに2300人ほどの会員がいるので、まずはそこに投げます。そうすると賛成も批判もすべての反応が見られるので、「こういう批判がきたら、こう返そう」などのシミュレーションができる。その後、世間から受ける批判については想定済みなので気になりません。怖いのはむしろ批判がないケース。例えるなら自分が豪速球のつもりで投げた球が簡単に打たれてしまったような感じです。だから全員が「いいね」と言った企画については、彼らにとって想定内の内容なんだと思って却下します。

「ロボットを作るだけでは、明るい未来はやって来ない」

裕:せっかくなので未来の話もうかがいたいと思います。ロボットやAIに注目が集まっていますが、西野さんが期待されていることなどありますか?

西野:僕はAIが活躍する未来が早く来てほしいと思っていますが、そこで無視できないのがAIの進化によって影響を受ける人たちのことです。例えばロボットタクシーを導入しようとすれば、タクシードライバーは職を失うことになるので、タクシー業界は歓迎しない。これはすごくもったいないことですよね。だからロボットタクシーを作るなら、同時にタクシードライバーの再就職先を考えなければならない。ロボットだけ作っていても、明るい未来なんて来ないわけです。

裕:同感です。AIの台頭により働く環境が急速に変化している現代では、私たち一人ひとりが働き方をデザインしていく姿勢が、より必要になってくると思います。西野さんご自身は今後、興味のあることや挑戦してみたいことはありますか?

西野:今、興味があるのは年配の方の仕事をいかにつくるかということです。実際、年末に開催した「天才万博」という音楽フェスでは、受付嬢を全員80歳以上のおばあちゃんにしました。これがけっこうスムーズだったんですが、どうなるかというとおばあちゃんに働かせてはダメだとお客さんが頑張ってくれるようになる。おばあちゃんがもたもたしていれば、お客さんが自分でチケットをもぎって入場してくれる(笑)。これが20代のスタッフだったらクレームになると思うんですけど、お年寄りにはみんなに助けてもらえる「老人力」がある。そういうおじいちゃん、おばあちゃんにしかできない仕事をもっとつくりたいです。

裕:今日のお話を通して、学生はもちろん、僕もたくさんの刺激をいただきました。西野さん、今日は素晴らしいお話をありがとうございました!