「元サッカー日本代表のセカンドキャリア」横浜F・マリノス アンバサダー波戸康広さん出演 CAMPセミナー

CAMPキャプテンで『はたらクリエイティブディレクター』の佐藤裕を中心とした、すべての学生に向けた固定観念にしばられない新しい“就活”を提案する『CAMPセミナー』が9月末、大阪府内で行われました。今回のゲストは元サッカー日本代表で、現在はJリーグの横浜F・マリノス(以下、マリノス)でチームアンバサダーを務める波戸康広さん。セミナーでは、会場に集った100人の学生らの意見も交えながら、そんな波戸さんの多岐にわたる経験をもとにたくさんの“はたらく”のヒントがつまった議論が展開されました。その熱気あふれる時間の一部を紹介します。

未来の自分を逆算して考える

佐藤裕(以下、裕):マリノスでアンバサダーをされている波戸さんですが、実際、どういうお仕事をされているのでしょうか。

波戸康広(以下、波戸):一言で言うと、広報大使です。マリノスのホームタウンである神奈川県・横浜市で、自治体のイベント参加、地元企業へのスポンサー営業、小学校でのサッカースクールなどいろいろな角度からのアプローチで地域の方との交流を深めてマリノスの認知度を高めていく活動を行っています。

裕:活動内容がサッカーだけにとどまらず幅広いですね。そういう活動に興味があったのでしょうか。

波戸:そうですね、もともと現役時代からサッカーだけではなくて他分野のことにも興味は持っていて、引退後はいろいろなことにチャレンジしたいと思っていました。ぼくらのようなサッカー選手は引退後の仕事でコーチ業という選択肢がありますが、実はその道には、僕は進もうとは思っていませんでした。

裕:それはどうしてですか。

波戸:プロの世界では、ある一定の年齢になると戦力外通告と隣り合わせです。『来シーズン契約しません』と言われれば、もうゼロからのスタート。そこで、コーチの話がよくありますが、それを受けたとしても、それも成績次第で契約が切られることがある。個人的な見方ですが、長期的には不透明な職業だと思うんです。だから、僕は引退の時期を現役の時から考えていました。すでに30歳の時に『5年後くらいのその時が訪れるだろう』と。じゃあその5年後、自分はどういう形で次のキャリアを進むべきなのか。選手の場合は、引退後の人生のほうが長いわけですから、どんな時でも人生設計を持つことは大事ですね。

裕:なるほど、その時が来て慌てて目の前にある選択肢にすぐ飛び乗るのではなく、自分の積み上げたキャリアを含めて未来の自分を描く、そして、そこから逆算して将来を考えるということですね。しかしながら、そのように現役時代から自分の引退後のことを考えるのはサッカーの世界では一般的なことなのですか。

波戸:いえ、普通は考えないですよね。僕自身、Jリーグを通して日本代表も経験させてもらいましたが、引退したら、ただの一人の人間にすぎない。その先の人生を考えたら、家族もいますし、生活水準はある程度保ちたい。そこで、60代、50代はこうありたい、40代はこういう経験をする、今の30代は何をしないといけないのか。引退後の年齢にそって未来の自分を逆算して考えて、自分はどうあるべきか、どうありたいかをずっと現役時代考えて過ごしていました。その結果、引退後の自分の“はたらく”ヒントを得られたのだと思います。

裕:未来の自分を“逆算して考える力”というのも“はたらく”には大事なことですね。

自分らしい選択=自分を磨ける環境

裕:そして、たどり着いたのがアンバサダーという仕事なわけですね。

波戸:実は、僕は戦力外だとクラブから言われる前に自分から引退を申し込んだんです。そして、当時、アンバサダーという職はマリノスにはなかったんですが、こういう幅広い広報活動をしてマリノスの認知度を高める仕事をやらせてくれないかと社長に自らプレゼンをしてこの職をいただいたんです。

裕:自分で引退を申し込んだというのも驚きましたが、社長へ直々に新しい職のプレゼンもするという行動力も波戸さんらしいですね。今の学生さんの多くは、とりあえずは組織に所属していないと不安や疎外感など社会とかけ離れてしまうという認識が強いのですが、そういう不安を払拭して自分らしい選択をするという意味で何か秘訣はありますか。

波戸:人間力を磨くことを大事にする、ですかね。実は最初はマリノスの社員になれと言われたんです。でも、僕自身を最大限に生かすには業務委託契約が良いと申し出ました。なぜなら、社員として組織に入ってしまうと限られた枠の中でしか活動ができませんよね。自分の可能性の広がりがそこで止まると感じたからです。やはり僕のキャリア形成においては人との関わりが一番大事でした。その関わりを広げていくことが僕の成長には必要不可欠だと思ったからです。基本的なことですが、人間は一人では生きていけません。だから、いろんな意味で組織は必要ですが、大事なのは、自分を磨くために必要なもの、環境を見出すことだと思います。それができれば自分らしい選択につながっていくのではないでしょうか。

チャレンジした失敗は成長の薬

裕:波戸さんはアンバサダー以外にも日本将棋連盟の親善大使やゴルフ番組の解説などサッカーの枠にとらわれず幅広いジャンルでも活躍されています。

波戸:もともとは人とのつながりを興味ある分野からどんどん広げたいと思っていたので、まずは言語化するということを意識して、その結果、いろいろなチャンスをいただくことができました。

裕:やはり、自分のやりたいことを言葉に出していくことは重要なんですね。そして、ワークシフトというようにいろいろな道にチャレンジすることも自身の成長には必要だとお考えですか。

波戸:チャレンジする失敗っていうのは成長の薬になると思うんですが、チャレンジしない失敗は毒でしかないと思っています。日本代表の時の話ですが、当時、僕に無敵艦隊と言われるほど強かったスペイン代表との試合に出るチャンスが訪れました。でも、『ミスをしたらもう二度と呼ばれない』という思いから挑戦したくないなと正直、思っていたんです。恥ずかしい話ですが、スペインから父親に電話をしたら、『お前に失うものはあるのか』と言われ、目が覚めました。それって挑戦する前にもう失敗しているんですよね。挑戦をしてだめだったらそれは、自分の肥やしになるし、相手を突破できたらもっと上のレベルに行ける。そう思い直して、試合に挑んだ結果、評価してもらい、今こうして日本代表の肩書があると思っています。楽なほうよりも厳しい環境を選択すると人間の能力はそこに追いつこうとする力って絶対あると僕は思います。みなさんも勇気をもって自分の夢への第一歩だと思って枠にとらわれず、興味あるものにはどんどんチャレンジしていってほしいですね。