• 読みもの
  • CAPTAIN インタビュー

就活成功者は学生時代をどう過ごしている? 入社後の現実!“リアリティ・ショック”について考える【前編】

就活成功者は学生時代をどう過ごしている? 入社後の現実!“リアリティ・ショック”について考える【前編】

就職活動の本当の目的はどこにあるのでしょう?「第一志望の企業から内定を取ること」でしょうか?

“内定を取る”ことが最大の目的のように思えるかもしれませんが、本当に見据えるべきなのは、その先に長く続く、社会人生活をいかに充実したものにするか、ということ。

入社後、思い描いていた企業イメージと現実との差に、「こんなはずじゃなかった…」とショック(=リアリティ・ショック)を受け、離職していくケースも少なくありません。

ネガティブなリアリティ・ショックを受けず、入社した企業で満足度を高めながら働いていくためには、就活の段階で何ができるのか?

リアリティ・ショックをテーマにCAMPキャプテンの佐藤裕とパーソル総合研究所の小林祐児さんが対談しました。

“リアリティ・ショック”とは何か?

:まず、「リアリティ・ショックとは何か?」ということですが、簡単に言うと、入社してから「こんなはずじゃなかった!」と、目の前の現実に対してショックを受けることです。

就活をやっている学生の多くは、「内定を取りたい」というのが一番の目的になってしまうんですが、それが「こんなはずじゃなかった!」っていうリアリティ・ショックを受ける原因の一つとなっているんです。

裕 :入社して実際に働いてみるまで気づけなかったことがたくさんある、ということですね。

:データで見てみると、入社後、何らかのリアリティ・ショックを受けた人が76.6%います。「予想通りの順調な社会人生活が始まった」と感じている人は4分の1しかいないという結果がでています。

:僕の感覚としては、もうちょっとショックを受けている割合が高い気もしますね。むしろ入社した会社に満足している新社会人や、リアリティ・ショックを受けずに仕事を続けている子に出会う方がレアケースかもしれません。

:実際に働き始めた学生さんたちも、佐藤さんにリアリティ・ショックについて報告に来ますか?

:めちゃくちゃ来ますよ。

:どういう内容が多いんでしょうか?

:「今こんな状態だけど、仕事を続けるべきかどうか」「どういう気持ちでこれから仕事を続けていけば良いか」というのが多いですね。

僕が言われて一番ショックなのは、「あれだけ裕さんに言われたのに、会社の一面しか見えていなかった。入社して気づいたことがたくさんあった」と言われること。

これって相談を受けていた僕の責任でもあるなぁって。

:難しいところですね。

:そう、就活に関する話って他社を否定しているように聞こえてしまう部分もあるから、難しいんですよね。言葉を選びながら伝えているんですが、なかなか言いたいことの全部は伝えきれなくて。

毎年12月とか1月あたり、入社した年の後半にそういったリアリティ・ショックの報告が来ます。

思っていた給与と違う?昇格のスピードが遅い?入社後に知る現実

:項目別で見ていくと、リアリティ・ショックを受けた内容で一番多いのは“給料・報酬の高さ”について。

37.4%の人が「これだけしかもらえないんだ…」という感覚を抱いているということです。

日本の企業は残業の有無で給料が大きく変動するので、実際に働いてみるまで給与システムに不透明な部分があることが要因だと思います。

:そうですね。給与システムについては実際には勤務してみないと見えてこない部分が多いですからね。

:次にショックを受ける項目で割合が多いのは、“昇進・昇格のスピード”について。31.9%の方が何らかのリアリティ・ショックを受けています。

売り手市場の中で、多くの採用担当者は「うちの会社では若いうちから活躍できます!」とアピールするのですが、企業の多くは高齢化し、重要なポジションも限られています。

「5年経たないとあそこのポジションには行けないんだ」「自分はこれくらいの仕事しかやらせてもらえないんだ」と、昇格のスピードの遅さに期待とのギャップを感じ、やりがいを失ってしまう人も多いんじゃないでしょうか。

:でも、入社してすぐに重要な仕事を与えられたり、上のポジションに昇格できたりする会社って、冷静に考えると「ちょっと危ないんじゃないか?」って思えるはずなんだけどなぁ。

:ミドル・シニア層、いわゆる40~50代の人数が多いのに、そういう人がたくさん上に詰まっているんだということは、就活中には見えてこないんですね。

リアリティ・ショックを受けることが早期離職に繋がる

:リアリティ・ショックを受けることによってどういう弊害があるかというと、入社してからの成長実感が低くなり、離職者が増えてしまうんです。

“こんなはずじゃなかった”から成長できない、“楽しくない”から会社を辞めてしまう。

問題は、就職活動の段階でこれをどうやって防いでいくか、という所にあります。

:まずは入社前に企業のことを正確に知る、ということが大きなポイントになってきます。

:そうですね。企業側の情報だけでなく、そこで自分に求められるスキルや志向性を含めて、この企業に本当に自分が合っているのかどうかを見極めることが大切だと思います。

入社前の企業に対しての理解度が高い人は、リアリティ・ショックを受ける割合が低いというデータも出ているんです。

企業への理解を、就活中にいかに高めるかが勝負であると言えます。「内定獲得」が目的になってしまうと、この点がおざなりになります。

:日本の就活スタイルにも問題があるんですよ。

企業は学生に良い所だけしか見せないですからね。

学生側も、どこがこの企業のデメリット部分なのか、どこが自分にとってマイナスな要素なのか、という大切な部分を人事に聞けないという関係性になってしまっている。

“内定を貰った優しい先輩への相談”が就活失敗の第一歩!?

:入社前に企業をちゃんと理解できている人は、「就活中は多くの人から話を聞く方が良い」という意識で就活しているという結果も出ています。

逆に、「就活中は重要な人だけに話を聞けば良い」と思っている人の方が、ショックを受ける割合が高いんですね。

:それはありますね。

就活失敗の典型的な始まりは、“先輩に相談する”ことだと僕は思っているので。

:どういうことでしょうか?

:わかりやすく言うと、先輩って“良い人”なんですよ。相談に乗ってくれるだけあって、後輩思いで優しい人が多いんです。

そういう人にこそ就活の相談をしがちなんだけど、その先輩ってすでにどこかに内定貰ってるわけですよね。

それなりの冠がついた企業の内定を持っているから、ついついその先輩が“就活の神”みたいに見えてきちゃう

:なるほど。それはありますね。

:頼ってくれる後輩に対して、先輩もめちゃくちゃ気持ちよく自分の就活について語っちゃうんです。

その先輩の意見を鵜呑みにしてしまうから、本人の視野が狭くなってしまう

大学3年生が大学4年生に聞いちゃうとかもよくない例。

だってその先輩はまだ社会に出ていないんだから、実際の現場についてはよく分かっていないはずでしょ?

就活の最終的な目的は、入社することじゃなく、働くこと、ですからね。

先輩が身近にいるとついつい相談してしまうんでしょうか?

:やっぱり先輩って相談しやすいんですよ。ゼミやサークルやバイト先にたくさんいますし。日本の就活って30年変わっていないんだなぁと感じます。

:というのは?

典型的なのは「まずは自己分析をやった方が良い」っていう教えがいまだにあることですね

あと、親の考え方がずっと変わっていないというのもあります。

親世代が現在のマーケットを理解していなくて、今の時代でも銀行への就職や公務員になることを勧めてくる人が多いんです。

“どの人が正しい情報を持っているか”を見極める目が必要

:大学のキャリアセンターについてはどう思われますか?

:日本の大学のキャリアセンターの機能性はこれからの課題だと思います。

学生のキャリアセンターへの信頼が低い大学もあるので 、わざわざ大学の組織を使わない学生もいるんです。

そこで大学の外に情報を取りに行くと、先輩と親が相談に乗ってくれたり助言してくれたりする。後はネットという無法地帯が頼りになってしまう。

:就活イベントも多数開催されていますが、これに関してはどう思われますか?

:就活イベントは、就活を始めるとまず足を運ぶ学生も多いですが、企業の思惑をわかっていない学生が多い印象です。

そこにいる社会人が正しい情報をくれると思い込んでしまっている。

「今、この業界が熱いんですよ!」とか言われるとついつい納得しちゃったり してね。

:就活のOG・OBアプリはどうですか?我々の時代にはなかったですよね。

これも、ただ後輩に話をしたいだけのOG・OBが登録している場合もあるので、そこで得た情報を鵜呑みにしては危険だぞという気持ちはあるんですが…。

:実際使っている学生は多いんですが、これに関しては企業の人事がさらに制限をかけていくことも予想されます。

最近は、報道されているような事件に繋がったケースも発生しているため、社員は学生と接点を持つなというお達しが出ている企業もありますしね。

:そうなってくると、就職に関して相談する相手がますます限られてくる状態になりますよね…。

そもそも就職に関する相談、という発想が間違っているのかもしれませんが、話を聞きたい場合はどういった人に聞けば良いと思いますか?

:就職に関して、誰に何を相談するか、というのは、相談する相手の数ではないんです。それよりも“どの人が正しい情報を持っているか”を自分がしっかりと目利きできるかどうかの問題

どこかの企業の営業職が自社の製品にいくら詳しくても、全メーカーの詳細までは知らないでしょ?でも学生はそこに違和感を感じていないっていうのが問題なんですよ。

:大人が言うことを全部信じちゃうっていうことでしょうか?ある意味ピュアな部分でもありますね。

視野を広く持つためには、情報・知識を“広げて、縮める”

:今はとにかく情報過多の時代。

検索窓を叩けばいくらでも欲しい情報は出てくるわけです。

でも、だからこそ、情報に埋もれてしまうという怖さがあることを忘れてはいけない。

情報や知識は広げるだけではいけなくて、縮めるだけでもいけない

一番正しいのは、「広げたあとに縮める人」だ、という研究結果もあります

:なるほど。

:就活って面白くなさそうじゃないですか。誰から見てもストレスフルな作業に見える。

だから、「この企業しか興味がない」と言って2、3社しか受けない人は、就活という不安から一旦逃げているだけの状態とも言えます。視野や視点を「広げる」ということへの恐怖です。そういう人は無事に就職が出来ても、仕事に対する満足度は低いしリアリティ・ショックも大きくなる、そうした調査結果も出始めています。

:いかに学生の視野を狭めるか、というのが人事の間違ったテクニックとして横行している感は否めないですね。

一社目でたまたま出会った人事が運命の人だと思ってすぐにそこに決めちゃって、早々と就活を終わらせる学生とかもいるからなぁ。

:情報を縮めることが先行していまって、一旦広げる、という作業が欠落しているんですね。

:一部の学生は秋採用まで引っ張ったり、自分の思うような所から内定を取れなかった場合は就職浪人したりもしていますから。

企業に入社するメリット、デメリット、両方をしっかりと理解するまで就活を終わらせない、という手もあるんです。

後編へ続く

※CAMP×パーソル総研の共同調査の詳細はこちら

小林 祐児さん(こばやし ゆうじ)

株式会社パーソル総合研究所 主任研究員

小林 祐児さん(こばやし ゆうじ)

上智大学大学院 総合人間科学研究科 社会学専攻 博士前期課程 修了。世論調査機関に勤務後、総合マーケティングリサーチファームを経て2015年入社。専門は理論社会学・社会調査論。現在の主な研究領域は長時間労働是正/ミドル・シニア層の社内躍進/新卒-若年者のキャリア/アルバイト・パート領域のマネジメントなど。
書籍に 『残業学 明日からどう働くか、どう働いてもらうのか?』(共著・光文社新書)『会社人生を後悔しない 40代からの仕事術』(共著・ダイヤモンド社)『アルバイト・パート 採用・育成入門』(共著・ダイヤモンド社)『マーケティング・リサーチの基本』(分担執筆・日本実業出版社)その他、各種新聞・雑誌・ダイヤモンド・オンライン等へのメディア寄稿、講演多数。

最新の記事

ページトップ