宇津木妙子氏対談 「熱血指導者が考える、人とのコミュニケーション法とは?」

各業界の第一線で「はたらくを楽しむ」人たちを紹介する「CAPTAIN INTERVIEW」。今回は、CAMPセミナー@名古屋にもご登壇いただいた、元ソフトボール女子日本代表監督の宇津木妙子さんをゲストにお招きしました。「厳しい指導者」というイメージがある宇津木さんですが、実際はどのように選手と接してこられたのでしょうか。現代の若者に向けて、温かく力強いメッセージをいただきました。

スマホを置いて、人と触れ合う」
佐藤 裕(以下、裕):本日は、よろしくお願いします。早速なんですが、今の学生は、人の輪から外れるのが怖くて、あまり自分の意見を主張しないなんて言われていたりしますが、宇津木さんは、今の若者に対して思うことはありますか?

宇津木妙子さん(以下、宇津木):私は今、東京国際大学の女子ソフトボール部の総監督をしていますが、こちらから話すきっかけを作ってあげると、いろいろと意見を言ってくれますね。練習に行った時に、必ず1年生から全員に言葉をかけるようにしているのですが、「今チームがどんな状態なの?」と投げかけると、感じていることを話してくれます。時には、「チームがうまくいっていません」と悩みを言う選手もいます。その時に私が聞くのが、「じゃあ、これからどうしていこうか」ということ。何らかの問題意識や不満があるとして、その解決策を選手と一緒に考えることでお互いの信頼関係を深めることができると思います。また、その際に大切なことは、ミーティングの場を作ることです。みんなで集まってお互いの目を見れば、いろんなことが分かる。嫌なことを言われて顔色が少し変わったり。そういう反応を見ることが大切だと思います。同じ目線で話せば親近感が生まれますよね。

裕:今の若者にコミュニケーションの難しさがあるとしたら、その原因は生きている環境なのかもしれませんね。

宇津木:私もそう思います。たとえば携帯電話って、便利なようで不便ですよ。今の若い人にとってはそれがあることが当たり前で、当然のものとして身についています。でも、人にきれいごとしか伝えない。会社の中のコミュニケーションも同じだと思います。伝えたいことをメールなどで一斉送信して済ませ、なるべく会話をしないようにする。一緒に飲みに行くことも少ない。それではなかなかうまいくいかないと思います。今の時代に大切なのは、スマホを置いて人と会うことだと思います。やっぱり「触れ合う」ということが大切ですね。それから、人前で自分の考えを話す経験が必要だと思います。私は、自分のチームの選手になるべく人前で話をさせるようにしていますが、それでもまだ十分とはいえません。そこには学校教育の問題も関係していると思います。「こういうことを経験しておくと社会に出た時に役立つよ」と学校や家庭がきちんと理解することが重要ではないでしょうか。それを伝えていくのは、佐藤さんたちの仕事かもしれませんね。がんばってほしいと思います。

裕:温かいお言葉ありがとうございます。実は、最近そのような話をよくしているんです。たとえば、学校で生徒を叱る先生も減っているし、会社のマネージャーは部下に嫌われたくないから叱らない。「叱る」という文化がなくなっていることも、今の若者に影響を与えていると感じます。

宇津木:「叱る」というのは、大きなテーマの1つだと思います。大事なのは「叱り方」ですね。選手を叱らなくてはいけない時でも、お互いの信頼関係があればきちんと気持ちが届きます。「今の時代の子だからダメだ」ではなく、必要なことは言い続けることが大切です。学校の先生でも監督でも、指導者としての責任があるわけだから。

「カッコつけるのではなく、素の自分をさらけ出す。」
裕:宇津木さんは今の学生に、「人」として何を学んでほしいと思われますか?

宇津木:私たちの大学の話をすると、ソフトボール部の選手に対して「文武両道」を求めています。まず勉強をしっかりして、その上でさらに部活動でも成果を残しなさいという考え方です。だから選手たちはすごく大変ですよ。でも、どれだけ大変だとしても4年間のことです。そういう中身の濃い4年間をやり遂げれば、社会に出てから必ず活きてきます。それと私が学生によく言うのは、いろいろな人と付き合ってほしいということです。ソフトボールの選手が他のスポーツの選手と関わってもいい。そうやっていろんなカテゴリーの人が交流するべきだと思います。

裕:先ほどのCAMPセミナーの中で宇津木さんは、学生の皆さんに「失敗をしなさい」と言われましたが、その理由を改めて教えてください。

宇津木:私自身、今までたくさんの失敗をしてきましたが、その失敗は必ず次の成功につながっています。みんな「失敗したらどうしよう」と言うじゃないですか。やってみなきゃ始まらないのに。それでは何も変わらない。とにかく一度行動して、失敗してみればいいと思う。何がいけなかったのか、何が足りなかったのか。私は失敗を繰り返しながらも自分なりのリーダー像やチームづくりの方法を考えてきました。そうして見つけたのが今のやり方です。要は、失敗から何を学ぶかですね。また、失敗する姿ほど、その人の素が見えてくるものはないとも思っています。私はテレビなどのイメージから「鬼の監督」と言われていますが、実際は私ほど選手にいじられる監督もいないんじゃないですかね(笑)。私は、選手に対して失敗する姿も見せている。つまり、自分をさらけ出してきたんですね。だからこそ、そんな私に対して選手たちも自分をさらけ出してくれて、プライベートなことも含めて何でも話せる関係になれた。そして、いざグラウンドに出たら「鬼の監督」として容赦なく指導する。そんな信頼関係のうえにある厳しさを大切にしてきました。

「ソフトボールの普及活動は、自分の使命」
裕:最後に、宇津木さんのこれからの夢や目標を教えてください。

宇津木:やはり2020年の東京オリンピックの成功ですね。そのために、ソフトボールの日本代表チームは勝つしかないと思っています。その次のオリンピックでソフトボールが採用されるかどうかはまだ決まっていないので、ソフトボールの普及活動を引き続き行っていくことも必要です。「もう私が前面に立つ時代じゃないな」という気持ちがありながらも、一方で「まだがんばらなきゃ」と自分に言い聞かせています。世界中でのソフトボールの普及。それは、夢というよりも「やらなければいけない使命」ですね。

裕:宇津木さんはいつも先の目標を持っているからこそ、エネルギッシュで輝いてみえるんですね。本日はありがとうございました。

 

<宇津木妙子さんプロフィール>